親知らず
親知らずの抜歯
親知らずは最後に生えてくる奥歯で、第三大臼歯(智歯)といいます。真ん中の歯から8本目の歯なので、歯科医は8番とも言います。
親知らずの語源
- 日本語:
- 親知らずが生える頃には、子供は親元を離れるため、親が歯の生え始めを知ることはないということで、親知らずという名が付きました。
- 英語:
- 親知らずのことを英語ではwisdom tooth(智歯)と言います。Wisdomとは、賢いとか分別という意味です。つまり、親知らずが、物事の分別がつく年頃になってから、生えてくる歯であることに由来します。
最近、日本人は顎の成長が昔に比べ劣ってきているといわれており、顎の骨が小さくなったのに、歯の大きさは変わらないので、親知らずの萌出するスペースが減り、傾いて生えたり、全部生えきれずに歯茎がかぶっていたり、生えきれずに顎の骨の中に埋まったままになっていることが多いようです。このように、親知らずの萌出状態に問題がある場合、歯磨きできれいに清掃することができずに汚れが蓄積し、周囲の歯茎に炎症を引き起こします。これを智歯周囲炎といいます。また、親知らずが前に倒れている場合、前方へ押すため歯並びを悪くすることが考えられます。
このような場合、もしくはこのような可能性がある場合、親知らずの抜歯が適応になります。
親知らず抜歯の実際
顎の奥の骨はしっかりしていますので、麻酔薬を十分にしみこませてから行います。麻酔が奏効すれば痛みはありません。押されたり、ひびくような感じは麻酔では消えません。抜歯適応の智歯は十分に萌出していないことが多いため、智歯周囲の歯肉をメスで切開して開くことになります。歯が横や斜めに生えていたり、根が湾曲もしくは肥大していたり、骨と癒着している場合には歯の周りの骨を少々削ることになります。麻酔が効いているので痛みはありませんが、削るときのイヤな音は我慢しなければいけません。一番奥の歯を扱いますので、大きく口を開けていなければなりませんので、大きく開けることが苦手な方は、休みながら進めたり、開口器を利用することもできます。
抜歯が、すごく怖かったり、嫌な方は、半分寝た状態で治療をする静脈内鎮静法を行うことも可能です。
レントゲン上で、親知らずと下顎管が重なって見えますが、
3次元的な位置関係は、CTでなくては分かりません。
CTにて、親知らずと下顎管の関係が3次元的に分かります。
この症例では、下顎管が、親知らずの舌側下方にあります。
抜歯後の痛み・腫れ・そのほかの合併症について
歯を抜いた後は、傷を治そうとする炎症が起こります。個人差はありますが、大体術後48時間くらいが炎症のピークになるといわれておりまして、そのときが最も大きく腫れます。それ以降は徐々に改善していきます。鎮痛剤はそのころまで使うことになります。
術中、唇の端(口角)を引っ張りますので、術後、口角が痛くなる場合があります。
抜歯後、口が開きにくくなることがあり、これは周囲の筋肉へ炎症が広がることが原因と考えられます。炎症が軽快するにつれ、口も開くようになってきます。また、筋肉の隙間を通って喉の方に炎症が広がった場合、飲み込むときに抜歯した側の喉が痛むことがあります。これも炎症の軽快とともに減少します。さらに、抜歯時の侵襲が大きい場合など、数日たったときに顎の表面が青くなることがあります。これは内出血によるもので、次第に青紫から黄色に変化し1週間程度で消失します。
抜歯後、3日ぐらいから、痛みが強くなることがあります。これは、ドライソケットというものになってしまった可能性があります。ドライソケットとは、本来、抜歯後の傷は血餅(血液がゼリー状になったもの)で塞がれるのですが、過剰な含嗽をしたり傷を気にして触ることにより、血餅が十分に形成されなかったり脱落してしまったり、また感染による炎症で血餅が溶解してしまうことで、骨が露出した状態です。骨が露出しているので、強い痛みを伴います。しかし、ドライソケットになっても、それに対する治療によって、1週間ぐらいで落ち着きます。
親知らずは下歯槽神経に近接していることがあるため、ごくまれに下唇〜オトガイ部の知覚異常が生じることがあります。ほとんどは数か月で改善します。
過剰埋伏歯の抜歯
現在健康な日本人の歯の本数は28本(智歯は除く)とされています。過剰埋伏歯とはこの28本および智歯、と歯の本数が決まっているのですが、まれにこれ以外に更に歯が存在することがあります。この中でも上顎の前方中央部に埋伏している過剰歯がおおく、上顎正中過剰埋伏歯といいます。この歯は通常自覚症状がほとんどないものが多く、X線写真検査によって初めて発見されることが多いようです。これは、切歯の歯間離開や萌出障害、歯根の形成異常などの原因とな ることも多いため、抜歯の適応になりえます。
上顎正中過剰埋伏歯抜歯の実際
基本的には智歯抜歯と変わりありませんが、歯肉の切開部位が歯の表側(唇側)の場合と裏側(口蓋側)に分けられます。また、止血対策のひとつとして、止血シーネというプラスチックの型で圧迫することもあります。止血シーネは事前に歯型を採ることで作成しておきます。
有病者の方の抜歯
有病者の方の抜歯。この中でも特に多いものが、出血傾向のある患者様の抜歯です。脳梗塞・心筋梗塞などの既往のある患者様は、バイアスピリン、ワーファリン、パナルジンなどの血液を固まりにくくさせる薬(坑凝血剤)を毎日服用されております。脳梗塞や心筋梗塞は、細い血管のなかで血の塊が詰まったりした場合、 それより先に血液が供給されないことで脳や心臓に大ダメージを与える疾患です。このような場合に歯を抜くと、血が固まらないので、いつまでたっても止血ができなくなり危険です。そのため、坑凝血剤の服用を止めてよいか?また止めるのであれば何日前からなら安全か?などを、内科医と対診することで決定します。止めないで、抜歯をすることもあります。
また、糖尿病のある患者様も、抜歯後感染が置きやすく、治癒能力も低いので、糖尿病をコントロールしてから抜歯を行う必要があります。
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